2004年08月03日

ショーシャンクの空に

冤罪で終身刑を受けた男の物語である。若者の評価が高い作品ではあるが、希望を捨てずに生きていくことの大切さが根底にある。本来冤罪ものの場合は無実の罪を晴らすというのがハッピーエンドなのだろうが、この作品は少々変わっている。もともと罰というのは人間が定めたルールを破った者に対して科されるものであって、冤罪は罪の無い人間に不当な扱いを強いるものであるから、たとえ無実が証明されようとも、拘留されている間に失われた時間、もしくは人生というのは取り戻しようが無い。結局冤罪を晴らすことがその人にとって最善という事では無くて、傍から見て納得できるというだけのものである。そういった結末に抗うかのように、本作品は自分なりの決着をつけている。もちろん人生とか社会というものを考えた場合に、最終的に勝者といえるのかと問われれば必ずしもそうではない。ただもし国家や組織、あるいは裁判制度をも含めて、自分にとって納得のいかない社会であるならば、逆にそれを見限ることによって自分なりの世界観、あるいは正義を確立するのもまた必要なのかもしれないと思わせる。

全編に渡って緊張感に満ちた映画という訳ではない。むしろ罪の無い人間が刑務所に閉じ込められる世界だから、もやもやとしたわだかまりがなかなか拭えない。この作品を際立たせているのは、主人公のどんな苦境に陥っても決して諦めないという姿勢である。そして救いなのはこの主人公が決して他人を恨まないということだ。最後に清清しさを覚えるのは全編に渡ってそれが貫かれているからである。

この映画を見て希望を持って生きることが大事なのだと感じる人が多い。ただ穿った見方をすれば、ただ希望を持って生きればいいのかというとそうではなくて、自分なりの周到な計算が裏にあるわけだから、才能や経験を生かした行動、そして自分の価値観に対する揺ぎ無い自信のようなものがそこにある。主人公は自分のスキルを生かして最後は勝ちを収めるわけだから、本来は一般に通じるような命の大切さとか生きていく希望とかという通り一遍の理屈では説明しえないところがある。ただ万人に通じることではなくても、そしてどんなに状況が悪かろうとも、どこかに一筋の光明が垣間見えるような、そんな気持ちにさせてくれる、いろんな意味で示唆にとんだ秀作である。

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