2004年10月19日

立山黒部アルペンルート7(宇奈月温泉編)

どれくらい寝たでしょうか、カミサンが「次が寺田だって」という声で目が覚めました。もうそんなに乗ったかと寝ぼけ眼で見てみると、確かに次の停車駅寺田となっています。電光掲示板は途中十何個かの停車駅を示していましたので随分早いなと思いましたが、「そうか、次か」と言いながら外を見てみると駅の看板が寺田駅になってます。「あれ、ここがそうみたい」どうやら反対方面から来る電車の待ち合わせでしばらく停車していた時にカミサンも起きたようです。「あー、まずい。早く降りなきゃ」かなり焦り気味で網棚に載せていた荷物を取り電車を降りました。他の乗客の奇異な視線を感じつつ慌てて降りましたが、この駅で宇奈月温泉行きの電車に乗り換えないとなりません。もっとも次の駅まで行ってしまっても同じ電車に乗ることは出来たかもしれませんが、なんと言っても一時間に一本しか無い電車です。なんとか無事に降りられほっと胸を撫で下ろしました。

乗換駅と言ってもここが本当にそうなのかというくらい寂れた駅です。それまでの無人駅がもっと寂しいものだったので、それらと比べるとまあ大きい方なのでしょうが、普通に見ればただの田舎の駅です。ほとんど吹きさらしのプラットホームは乗客らしい人は同じ電車から降りてきた3組くらいで、特に近所の人が乗る気配はありません。もっともこちらが降りるのが遅れているのですでに乗り込んでいたのかもしれませんが。それにしてもほとんど田んぼの中に作ったような駅です。頭を覚醒させるためにタバコを吸っていると、改札にあたる駅舎の方からひとりのおじいさんがゆっくりと歩いてきて「すいませんが、駅の構内は禁煙ですからあちらの灰皿のあるところでお願いします」と注意を受けてしまいました。気付かずに吸ってしまったのは申し訳ないですが、ほとんど田んぼの真ん中です。構内といってもどこからが構内なのか、実際には敷地内は構内だということなのでしょうが、それにしてもほとんど乗降客も無いだだっ広い田舎の駅で喫煙を注意されるとは思いもしませんでしたが、あとで確認したところ確かに禁煙に協力をみたいな張り紙が駅の壁のところに貼られていました。なんでも健康増進法の適用によるらしいですが、杓子定規に法律を適用するとこれほど馬鹿らしい状況になるものかと思ったものです。

そうは言うものの禁煙場所でタバコを吸ったこちらに非があるのは間違いありません。それを注意しに来たおじさんも駅員というよりは交代で番をしている近所のおじいさんみたいな感じで、その注意をするときも実際申し訳なさそうに来られたので、迷惑かけたこちらがかえって恐縮してしまいました。ただその反面、駅の外に出られるいい機会です。田舎の駅なので外に出たところで何があるわけではありませんが、せっかくなので写真を撮ってみました。驚いたことに駅名が右から書かれています。そうとう古い駅のようです。もちろん駅などは戦前からあったりするのは珍しくありませんが、改修や建てかえを行わないのはむしろ珍しいのではないでしょうか。田舎の駅はみんなこんなものなのかなという悲哀を感じてしまいました。

約10分ほどすると宇奈月温泉行きの電車が入ってきました。先ほど乗った電車と同じ2両編成です。途中無人駅では前の車両の方が人が乗り降りが多い分人も多かったので後の車両にしようかとも思いましたが、他の人たちも同じような考えかほとんど後の車両に乗り込もうとしていたので、あえて前の車両にしました。ところが面白いことにこのとき前に乗ったつもりが途中上市という駅でスイッチバックするような感じで後の車両になりました。結構乗降客が多かったのですが、運転手までが料金箱に蓋をして降りていってしまったのには驚きました。ただその運転手を見ていたら今度は車両の後に回って料金箱の蓋を開けています。なかなか忙しい電車のようです。この電車はただのローカル線ではありますが、普段目にすることが出来ない新鮮な発見に満ち溢れていました。自分が都会人だと言うつもりもありませんが、普段首都圏の電車しか乗らない人は何十年か前にタイムスリップしたような感覚に襲われるのは間違いありません。

さて、その後もローカル電車の旅は続くわけですが、かなり長い乗車時間です。宇奈月温泉につく頃にはカミサンはトイレに行きたくなっていました。途中の寺田駅のトイレは木造の怪しいつくりで私は入りませんでしたが、おそらく神経質な女性は尻込みするに違いありません。立山で乗る直前に入っておかないと、地獄を見る可能性があります。なんと言っても一時間に一本しか無い電車ですから。

長い乗車時間の後ようやく宇奈月温泉に到着しました。改札を出るとホテルの人たちが旗を持って待っています。それほど駅から離れているわけでもなさそうですが、それだけ客を大事にしているということなのでしょう。宿泊予定のホテル黒部の人を見つけて声をかけます。他に客もないまま外に停めてあったマイクロバスでホテルまでいきます。この頃には少し雨が降ってきていました。車だと大した距離ではありませんが途中坂もあり、歩くとかなり大変そうです。

このホテル黒部は最近『釣りバカ日誌』でロケ地になったようです。部屋は角部屋でトロッコ列車の峡谷が見えるかなり景観のいいところでしたが、若干苦言を呈しますと、このとき入った風呂の温度がかなり熱めでとてもゆっくり浸かっていられなかった事、もうひとつは部屋食の際にご飯が出てくるのが非常に遅かったこと。6時半からの夕食でしたが、他のおかずはすでに用意できているのに実際にご飯が出てきたのが7時20分過ぎ。最後天ぷらが後から来ると言っていたのでそれで食べられるかと思って他のおかずを全部平らげてしまいましたが、持ってきたのはエビも入っていないお粗末なもの。しかも天つゆではなく、塩でしたので正直これでどうやって飯食うんだと、それは噴飯ものというよりは憤慨ものでした。たまたまその日の運が悪かったのでしょうが、ご飯の出てくるのが食事が始まってから50分も経ってからではいくらなんでも遅すぎるでしょう。正直ここの印象はそれが全てと言っても過言では無くなってしまいました。ところでここの風呂は渓谷に面して露天風呂があるのですが、建物の両サイドに男湯と女湯と分かれている感じで、100mくらいの距離でお互いの風呂が見えてしまいます。トロッコ列車からは両方見える感じなんですが、果たしてこれはいいのかどうか難しいところです。露天同士ではその距離からあまりよく見えないとは思いますが、それでも意識しないわけにはいかないでしょうね。いっそのこと混浴にしてもらった方がスッキリするのではないかなどと考えたりしていました。温泉に関してはこの宇奈月温泉には源泉が無く、お隣の黒薙温泉から引湯管を使って温泉をひっぱってきているということでした。源泉の温度が100度近く約7kmの引湯管を通ってくると宇奈月では65度くらいにはなるそうですが、それでも水で薄めないとそのままでは入れません。その辺は各旅館やホテルのさじ加減なんでしょう。ともあれ、食事の一件でだいぶ気分を害したのは事実ですが、その分酒も回りこの日も早々に床についてしまいました。

                                         (つづく)

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