2004年10月07日

立山黒部アルペンルート5(本編2)

黒部平は標高1,828m、ケーブルカーを降りて出口からそのまま歩いていくと50mあるかないかのところがもうロープウェー乗り場になっています。一応レストランとみやげ物売り場があるのですが、ほとんど乗り換え駅のような感じです。標高が高くなってもその分日も高くなってきたのでそれほどの寒さは感じません。建物の外に多少開けたところがあり、そこで待ち時間の間に記念写真の撮影をする人がほとんどです。ここで何かをしようという人はあまりいないでしょう。15分程度の待ち時間のあと、立山ロープウェイに乗り換えます。

平日で人が少ないためか中はかなり余裕がありましたが、ゴンドラの前後の床に見慣れないブロックのようなものが並んでいました。恐らく混雑時はどけるのだと思いますが、揺れないための重しなんでしょう。持ってはみませんでしたが、ひとつあたりかなりの重量だと思います。はっきり言って移動する時には邪魔になりますが、乗客があまり動き回って揺れるよりはいいかもしれません。ここから立山の大観峰に向かいます。このロープウェイは動く展望台とも呼ぶにふさわしい、眼下に黒部湖を見渡せるとても景色のいいものです。途中自動でアナウンスが流れますが、その中であらためて驚いたのは、黒部平と大観峰を結ぶそのロープウェイは、途中にロープを支えるための支柱が一本もありません。そう聞かされて初めて気付きましたが、時間にして約7分の距離をロープだけで繋いでいます。それゆえに他に邪魔になるものがなく、黒部湖の景色を満喫することができます。逆に立山の方を見上げると、上の方は少し紅葉が始まっているようです。刻々と移り変わる眼下の景色を堪能しながら、ロープウェイは標高2,316mの大観峰に到着します。

立山の中腹にある大観峰は先ほどのロープウェイから見ることの出来た景色のほぼ最高点になるために、その景色は素晴らしいものです。ただその後に乗るトロリーバスが30分に一本くらいしかなく、かつ乗り換えの時間がそれほど無いので、ここも展望台からちょっと眺めるくらいのものでしょう。遠くに見える山々が雄々しくそびえ立っています。カミサンがその山の案内図を見ていて「なにこれ?」と言ったので、あらためてよく見ると一番右にどこかで聞いたような名前の山が書いてあります。これを見て思わず、郷ひろみ岳や西城秀樹山を探したのは私だけではないと思いたいですが、もともと野口五郎という芸名はこの山から採ったものらしいです。それは戻ってきてからわかったことなので、それを見たときには何か野口五郎に縁がある山なのかなどと考えたりしていました。山の名前にしては少し長い気もしますが、なんでも地名から来ているようです。

さて、ここ大観峰もほとんど中継駅の様相で、すぐに今度は立山を突き抜ける立山トロリーバスに乗り換えます。これは立山の中腹を貫いて、ほぼ大観峰の反対側に出るバスですが、アルペンルートのメインイベントとも言われる室堂まで約10分の乗車時間です。室堂の標高は2,450mなので大した勾配でもなく、前回のトロリーバス以上にひたすらトンネルの中を走りますので、これが一番つまらないかもしれせん。車内で一緒になった子供連れの家族がやたらうるさかったのを記憶しています。子供にとっては真っ暗な道が面白いのか退屈なのかは良くわかりませんが、いつの時も煩いのは特にこれに限ったことではないのでしょう。当然の事ながらトンネルの中なので、景色も何もありませんが、途中立山の頂上地点の真下を通り抜けるときに案内の掲示板が出ています。まあ、所詮これもトンネルの中なので、気分的なものでしかありませんが。

ともあれ、子供たちの騒音に悩まされながら室堂に到着しました。ここにはアルペンルートで有名なホテル立山があります。富山側からの観光客もここまではバスで来れるので、それまでと違いだいぶ混雑している感じです。山の反対側に来ただけなのにかなり雲がかかっています。気温もちょっと低めで肌寒く感じます。山の天気は変わりやすいものですが、本来ここは360度山々を一望できるので、天気によってかなり印象が左右されてしまいます。ところどころ雲の切れ間が見えるのですが、とうとう日の光を浴びることはできませんでした。山は晴れているときと曇っているとき、あるいは雨のときではその景観もさることながら、気温もかなり変わってきます。標高が高いのでそれだけでかなり涼しい感じですが、風が吹けばもっと体感温度が下がっていたに違いありません。私自身一番楽しみにしていた場所なので少し残念ではありましたが、まだ雨に降られたり、霧で何も見えなかったりしなかっただけでも良しとしましょう。ただ実際に行ってみて感じたことはアルペンルートは天気さえ良ければかなり見応えのある場所ですが、悪いとただ乗り物を乗り継いでいくだけという感じになってしまいます。その辺は運否天賦と言ったところでしょうか。

さて、天気が悪くてもせっかく来たのだからその辺を散策しないのはもったいないので、整備された遊歩道を歩いていきます。少し歩くとすぐに硫黄の臭いがしてきました。どうやら地獄谷の方から流れてきているようです。かなり遠くの方までコースが続いていますが、もし時間があればゆっくり散策したいところです。一応山の中ではありますが、かなり開けた台地のようなところなので、あまり遠くまで行かなければそれほど時間もかかりません。雲がかなりのスピードで流れていたので晴れ間の出るのを期待していたのですが、なかなかうまく晴れてくれません。本当はここでたくさん写真を撮りたかったのですが、気温が下がったせいもあるのか、すでにカメラのバッテリーが残り少なくなっています。そんなわけでパノラマ写真も断念してできるだけバッテリーを温存することにしました。ただこの日それほどの枚数を撮っていた訳でもないので少々恨めしくもありました。ところでこの日遊歩道はところどころ車椅子用の工事をやっていて、特に駅舎近くのところでは耳を覆いたくなるような煩い音を立てながら、もともと有った遊歩道の改修作業をしています。実はこの遊歩道、大きな石を埋め込んであるため、表面がでこぼこしている分、非常に歩きづらいものになっています。当然車椅子では移動できないような感じですので、その工事は決して無駄ではないと思いますが、むしろなんで最初から平坦にしなかったのだろうかという疑問があります。もしかすると、冬場に滑りづらくするための工夫なのかもしれませんが、逆に夏場はありがたくない状況です。一応山なのでハイヒールとかで行く女性はいないだろうとは思いますが、底の薄い靴だと足が痛くなること請け合いです。

さて、時間の関係上というか曇っていたのでそれほど感動的な景色とも言いがたかったので、血の池の方まで行きかけたのですが、結局みくりが池周辺の遊歩道を散策するに留めました。一応山なので多少のアップダウンはあるものの、それほど厳しい道では無いのですが、標高が高いせいかカミサンは少し歩いたところであごを出しています。人間疲れてくると怒りっぽくなってくるので注意が必要です。私は比較的山道は好きな方で、それまでほとんど乗り物に乗ってばかりだった開放感からか、かなり足取りは軽めでしたがカミサンのスピードにあわせて歩くのがちょっとだけ億劫ではありました。みくりが池というのは池と言うにはちょっと大きめで、かといって湖というにはだいぶ小さめです。まあ湖と呼ぶには深さも関係するのでしょうから文字通り池なのでしょうが、恐らく天気が良ければかなり綺麗だったに違いありません。歩いている途中に遠く上の方に見える山々の頂きに山小屋らしきものが見えたりして、一度ああいうところに泊まってみたいものだと思いました。のんびり歩きながら小一時間もいたのでしょうか。アルペンルートのクライマックスとも言える室堂の自然を一通り堪能して美女平行きのバスに乗ることにします。

                                             (つづく)

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